妄想老人日記

連載第46回:移る
ヘリベ マルヲ のプロフィール写真書いた人:ヘリベ マルヲ
2017.
06.20Tue

移る

誕生日の翌日、桜桃忌にサーバを移転しました。42年間でやったことのうちでいちばん気に入っています。小説はうまくなれなかったけれどもこのサイトだけは進歩がありました。やはりmixhostに移転してよかった。キャッシュを使わなくても高速だし、LiteSpeedなる推奨プラグインを使えばさらに高速になります。W3 Total Cacheには長いこと世話になりましたが消去が反映されるまで非常に待たされました。LiteSpeedは一瞬です。プラグインではなくサーバの性能がいいからかもしれません。必要な作業がすべてわかりやすく説明されていて、SSLの導入もあっけないほど簡単でした。はじめてWPを導入したとき、参照した情報がよくなかったので、おかしなディレクトリにインストールしてしまったのですが、それも追加料金なしで直してもらえました。不具合いっさいなし。何よりサポートが懇切丁寧なのに感動しました。五千円以下で移転作業をすべて代行してもらえた上に、しつこい質問に快く何度でも即答してくれました。ここまで親切なサポートは日本では珍しいと思います。逆に悪い例ならいくらでも挙げられます。これまで使っていた某社など、どのサービスでも厭がらせで問合せを撃退する方針があからさまでした。肝心のサービス品質も、いくら「安かろう悪かろう」でもせめてもう少しどうにかならないのか、と驚き呆れるばかりでした。mixhostはまだ歴史が浅く、利用者が少ないので高速なのかもしれませんが、もし仮にそうだとしてもサポート品質がこれほど高ければ文句はありません。大ファンになりました。

手篤い代行サービスのおかげで移転そのものはうまくいきましたが、旧サーバの劣悪な品質をごまかす対策の撤廃や、はじめてのSSL導入などによる影響はありました。たとえばPageSpeed Insightsの数値は一桁に落ちました。得点を上げるためのプラグインやブラウザキャッシュをやめたからです。JSの圧縮はヒーローヘッダのカルーセルが動かなくなりますし、ブラウザキャッシュはCSSの更新が反映されなくなります。CSSとHTMLのminifyだけ試しましたが得点は変わりませんでした。retinaで美しく見えるように巨大な画像を多用したのが響いています。これもどうにもなりません。体感速度が良好なので余計なことはしないことにしました。SSL化の影響としては、一部の記事でサイト証明書がどうとかで識別情報がどうとか、という警告が出ました。原因はURLを記述することで自動的に埋め込まれるブログカードでした。WordPress標準の埋め込みカードは使わないほうがいいかもしれません。また今回はネームサーバの変更にも戸惑わされました。実際には反映されていて、iPhoneからは新サーバにつながるのにmacからは旧サーバになります。それもChromeからだと一度は正しくつながり、ログインしようとすると旧サーバに転送されるというわけのわからない状況でした。macのDNSキャッシュを消去したら正常に接続できました。HTTP Strict Transport Securityなるものをhtaccessに設定し、hstspreload.appspot.comなるサイトで登録をして無事に完了。

アイキャッチと要約文を自動的に反映させるために、All in One SEOの代替としてOGPを手動で設定しました。そのため固定ページがすべて同じように表示されるようになりました。本の紹介がうまく表示できないので改善したいです。共有ボタンは悩んだあげく設置しました。ソーシャルの文脈に寄りかかって成立するものは自分には向きません。文章は単独で完結させたいのです。サブテクストはなるべく外部に置きたいのでコメント欄は設置しません。でも掲示板くらいならあってもいいかもしれないと考えています。これまで試したプラグインはどれもしっくりきませんでした。BuddyPressの標準機能はグループもスレッドも余計。bbpressはスレッドが余計。トピックだけで充分です。ある程度だれでも書き込めるのが望ましいとはいえ、通りすがりの書き棄てごめんにしてしまうと悪意の掃きだめになります。レーベルの会議室として実現するなら承認メンバーだけで使えればよいのですが、感想を書き込む場所にするのであれば、うーん、Facebookログインかなぁ。twitterのほうがカジュアルですがセキュリティ的に苦い経験があります。今回は採用を見送りました。移転を完了し、ネームサーバの変更も浸透したところで、遠ざかっていた読書に戻りました。

『すべての見えない光』をようやく読み終えました。緻密な構造で見えにくくなってはいますが一種のお宝争奪戦ものとも考えられます。思いのほかベタなエンタメ要素が盛り込まれていて、病に冒された悪役とか妙に既視感がある感じ。情景を積み重ねた塔のような語り口がいかにも短編作家の長編だなと思いました。エピローグは余計じゃないでしょうか。対戦ゲームやtwitterもまた利用者によっては「見えない光」だからです。われわれが小説を読み、書く理由は手紙を瓶に詰めて海に流すようなもので、見知らぬだれかに届くかもしれないし届かないかもしれない。そういう営みにひとは生かされるのだという話でした。であればそれはひとによっては対戦ゲームであるかもしれない。何もあんなふうに浅薄なやり方でこき下ろさなくてもいいだろう、せっかくいい小説だったのに最後の最後で、ちょっと興ざめだな……と思いました。作品全体としては傑作で、長く想い出に残る一冊になりそうです。他人と関わるのをやめたおかげで今年は悪くない誕生日を過ごせました。


ヘリベ マルヲ のプロフィール写真

ヘリベ マルヲ

(へりべ まるを、1975年6月18日 - )作家。略称、ヘリマル。独立系出版レーベル「人格OverDrive」から代表作『悪魔とドライヴ』をはじめとする魔術的な作品群を刊行。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにてウェブディレクター・佐々木大輔氏から「注目の『セルフパブリッシング狂』10人」に選ばれた。