『マーティン・ドレスラーの夢』スティーヴン・ミルハウザー

マーティン・ドレスラーの夢

マーティン・ドレスラーの夢

スティーヴン・ミルハウザー

¥1,404
20世紀初頭のニューヨーク。葉巻商の息子マーティン・ドレスラーは、九歳で早くも商才を発揮し父親の店を手伝い始めたのがきっかけで、近くのホテルで雇われる。持ち前の勤勉さと頭の回転の速さで、ベルボーイから始めて順調に昇進を重ねた彼は、ついに自らホテル経営に乗り出す。彼が夢見るホテルとは、それ自体がひとつの街を内包したような巨大ホテルだった。一見アメリカン・ドリームの主人公のようでいて、実は独自の世界へ突き進んでしまう芸術家肌の実業家。実用の世界を超えて凝りに凝った仕掛けのホテル。ピュリッツァー賞を受賞した、ミルハウザー・ワールド炸裂の傑作長編。

「昔、マーティン・ドレスラーという男がいた」。これ以上ないと思えるほど、簡潔で力強い書き出しが目を射る。19世紀末から20世紀初頭のニューヨーク、葉巻商の息子に生まれ、ベルボーイからホテルの経営者に登りつめた男。それがこの小説の主人公だ。では、本書はアメリカン・ドリームの物語なのだろうか? たしかに半分はそうである。なぜならこれは「夢」に関する物語だからだ。当初、いかにも現実の歴史に沿うよう展開していた出世譚は、マーティンのホテルが次々と建造されるにつれてゆがみ、やがて夢幻のごとき色彩を帯びてくる。ホテルの内部には、森や滝、本物の動物が走り回る公園、キャンプ場、はては地底迷路などという、現実には考えられないたぐいの施設が増殖、それに歩調を合わせて地下へ地下へと層も広がってゆく。ついにマーティンは、それ自体でひとつの社会と化したかのような巨大ホテルをつくり上げるが、あまりにも常識を凌駕していたため世に理解されず、その絶頂にもかげりが訪れる――。きわめて独特な物語世界だが、圧巻はホテルの描写だろう。輪舞のように次々とつづられていく奇怪ともいえる施設の数々。読み進むうち、いつしか読者はもうひとつの世界を築く快楽に加担している。アメリカの歴史を借りて紡ぎだされた夢幻境。それこそ、著者が創造しようとしたものにほかならない。著者は本書によってピューリッツァー賞を受けているが、そうした栄誉すら、この作品の前では幻のごとく色あせてしまう。まことに恐るべき怪作である。(大滝浩太郎)

これまでの彼の作品は、子供のときの夢を大人になってもずっと持ちつづけるマニアックな人間を主人公にしたものが多い。素朴な作業から始まって想像を絶する名人になってゆく人形師やアニメーション作家。彼らは現実にはありえないような精妙極まりない作品を完成させていく。ある意味では本書の主人公もそんな「夢を追う人」のひとりである。だがピュリッツァー賞を受賞したこの長篇がこれまでと違うのは、状況設定や人物構成にある種のリアリズムが侵入していることだ。世紀末から20世紀初頭のニューヨークを舞台にホテル王になりあがっていく主人公はきわめて現実的な愛や結婚、成功や挫折を経験する。にもかかわらずここには、紛れもないミルハウザー流幻術が展開される。(Amazon商品紹介より)

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著者紹介


スティーヴン・ミルハウザー

(Steven Millhauser、1943年8月3日 - )現代アメリカ作家。現在はサラトガ・スプリングスに住み、スキットモア・カレッジで教鞭を取りながら作品を発表している。幻想的・耽美的・ロマン主義的な作風で知られ、子供と芸術家を主人公に据えた物語を好んで書く。自動人形、ゲーム、博物館、幻想の書物といった人工物や人工世界の魅惑を描きつづけて、日米で熱心なファンを持つ。1943年、ニューヨークで生まれ、コネティカット州で育つ。1965年にコロンビア大学を卒業。ブラウン大学の博士課程に進んだが、中退した。1972年、『エドウィン・マルハウス』でデビュー。11歳のときに不朽の傑作小説『まんが』を書きあげた天才少年エドウィンの伝記を類稀な記憶力を持つ友人が綴るという、伝記文学のパロディである同書は、フランスで、独特な手法を用いた作品に与えられるメディシス賞外国語部門を受賞した。ペンギンブックスにも加えられた(1990年に福武書店から出た邦訳はしばらく絶版となっていたが2003年に白水社から復刊された)。日本ではこの作品のみ岸本佐知子が翻訳している(他は柴田元幸訳)。1986年に出版された『イン・ザ・ペニーアーケード』は、日本では「新しいアメリカの文学」シリーズのひとつとして白水社から刊行された。20世紀初頭のホテル経営者マーティンのアメリカン・ドリーム実現と失墜を描いた、長編『マーティン・ドレスラーの夢』で1997年にピューリッツァー賞を受賞。2006年、短編『幻影師、アイゼンハイム』を原作にした映画『幻影師アイゼンハイム』がエドワード・ノートン主演で公開された(日本では2008年に公開)。(Amazon著者ページより)


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