その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。


落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。物語は花の結婚から二人の過去へと遡る……。第138回直木賞受賞作。